社内データ活用の5つの壁と乗り越え方
データ活用の重要性は理解できても、実際に導入を進める際には様々な壁にぶつかることがあります。社内のデータ活用を始めるにあたり、皆さまが直面しがちな5つの壁とその乗り越え方をご紹介します。
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壁1:組織の意識改革
課題:変化を恐れる社風がある
データ活用には、これまでの業務プロセスや意思決定の仕方を変革する必要があります。しかし、長年の慣れ親しんだ体制の変化を嫌う社風が障壁となり、導入に対する抵抗が生じがちです。
実際、我々がご支援してきた企業様でも特に長年企業に貢献されているベテラン層の方は急な変化を拒む傾向があります。これは「新しいことを吸収しきれない」といった“頭の柔軟性やキャパシティの壁”や、「今まで身につけてきた仕事力が否定され、自分の価値が危ぶまれるのではないか」といった“自己防衛反応”などが無意識のうちに発生しているからです。
また、「与えられた仕事を正しく行うことに価値がある」といった減点法の評価をされている企業様ですと、新たな業務は評価を獲得するための学習コストが掛かってしまうため、どうしても変化を拒む傾向が出てくるため「変化を恐れる社風」の一因となっています。
対策:経営層が決意表明し、プロジェクトの責任者となる
「社風」といったパワーの強い要素を覆すには大きな力が必要です。“組織の意識改革”を促す必要があるため、実行するには経営トップのリーダーシップが不可欠です。
あなたがトップの立場であれば、ぜひ強いリーダーシップやコミットメントを持って、組織のマインドセットを浸透して頂きたいと思います。
もし、経営企画やトップのブレインの立場、現場担当の方で会社を変えていかなければいけない立場の方であれば、まずはトップリーダー層を巻き込み、トップダウンで意識改革を進める事が重要になります。
対策:評価制度を見直す
なお、新たな取り組みを行うにあたり、評価方法の見直しも必要かもしれません。今までの取組も評価しつつ、新たな取組に移行できるように評価についても少しずつ移行をする必要があります。
これらを踏まえて、トップの力が重要となってきます。
※上層部への提案方法については別途記事作成中
壁2:予算確保とツール導入
課題:データ収集・分析ツールの導入費用の予算を立てられない
データ活用を本格化するには、データ収集やデータ分析に関するIT投資が不可欠です。データレイクやBIツール、AIプラットフォームなどの導入費用がかさみます。中小企業にとっては大きな負担となり得ます。
対策:ROIを意識した投資判断ができる材料を揃える
一方で、データ活用による業務効率化やマーケティング高度化などを考えれば、適切な投資ならばROI(投資収益率)が見込めます。費用対効果を十分に見極めた上で投資判断を行うことが肝心です。
対策:クラウドサービスやSaaSの組合せによる予算に合わせた対応をする
予算確保が難しければ、まずは低コストのクラウドサービスやSaaSを導入し、小規模からデータ活用を開始する事から始めてはいかがでしょうか。
弊社でも、お客様の予算規模に合わせて、段階的な導入計画のご提案を日々実施しています。特にローコストで費用対効果の高いクラウドサービスの活用もお勧めしています。まずは限られた範囲から始め、ROIを確認しながら、徐々に活用範囲を広げていくのがベストプラクティスです。
対策:補助金の活用
中小企業向けのIT導入補助金など、国の支援を受けられる場合があります。これらの補助金活用も視野に入れて予算組や投資効果の検討を行いましょう。
壁3:システムとガバナンス
課題:データがバラバラで組み合わせた分析ができない
企業が保有するデータは、営業システム、生産システム、会計システムなど、さまざまなシステムに点在しています。これらのデータを統合し、活用していくためには、データ連携の仕組み作りが必要不可欠です。
対策:互換性や拡張性のあるツールの選定する
システム間の接続を行うにはミドルウェアの導入や、データ統合に向けたアプリケーション開発など、システム構築コストが発生します。
なるべくコストを削減するために、ツール間の互換性やツールの拡張性を考慮しながらツール選定を行うことをおすすめします。
課題:データプライバシーとセキュリティ対策を考慮する必要がある
個人情報の取り扱いルールの整備や、データへのアクセス権限の設定、暗号化など、ガバナンス体制の構築が不可欠です。
対策:活用とリスク対策のバランスを追求する
一方で、過剰な規制はデータ活用の敷居を高める要因にもなり得ます。生産性向上や新規ビジネス創出など、データ活用のメリットと、プライバシーリスクのバランスを考慮する必要があります。データ取扱規程の整備、アクセス権限の設計、セキュリティ対策の実施など、最低限のガバナンスを定めつつ、フェアな枠組み作りが求められています。
壁4:データ・ITリテラシーの不足
課題:社員のITリテラシーやスキル向上に向けた教育ができない
データ分析やデータ活用には一定のスキルが求められますが、多くの企業で社員のデータリテラシー不足が課題となっています。
対策:社内エバンジェリスト(IT知見の伝道者)を指名する
新たな取り組みを行うためには社内で積極的に取り組みを広め、フォローする人材が必要不可欠です。
最初は知識が無くても、分からなくても構いません。社内で知見共有を推進に責任を持つメンバーを配置することが重要となります。
対策:研修と実践を通じたスキルアップを実施する
各メンバーのデータリテラシー向上には、座学だけでなく実務を交えた研修が効果的です。
オンラインやeラーニングの座学研修だけでなく、ハンズオン演習を組み合わせた研修をすると、より習熟度が高まります。
その上で、継続的な実践と定期的な習熟度チェックを通じてスキルアップを図ることが重要です。
最初の取り掛かりが重要となるため、必要に応じて推進チームメンバーが各担当者に個別のフォローアップができる体制構築をおすすめします。
壁5:データ活用人材の確保と組織体制の構築
課題:データが蓄積されてもデータ活用ができない
データ分析やAI活用のためには、高度なスキルを持つデータサイエンティストの確保が欠かせません。しかし、そうした人材は需要が高く、確保が難しいのが実情です。米国の調査によると、データサイエンティストは最も人材不足が顕著な職種の1つとされています。
対策:経営層と連携したデータ活用チームを編成する
データ活用を全社的に推進するには、データ分析を専門に担う部署の新設や、データ人材を分散配置するなど、適切な組織体制の検討が必要となります。大手企業ではデータグループを新設し、各グループのデータ活用支援を行う体制を構築する事例が増えています。
ただし、データサイエンティストの採用をするだけでは活用が進みません。経営改善を役務とした経営層や経営企画がチームをマネジメントしながら、どのようにデータを活用すべきかを定義した上で活用推進する必要があります。
データ活用推進の重要なポイント
以上のように、データ活用への取り組みには様々な壁がありますが、適切な対策とマネジメントによって乗り越えることは十分可能です。
まずは経営者の皆さまや経営企画の皆さまがコミットメントをして真摯に取り組むことが重要なポイントとなります。
さらに、まずは現在の社内の障壁を認識した上で、着実に一歩一歩を踏み出すことをお勧めします。
なお、取り組みを始めるために「どこから手をつけたら良いかわからない」「検討時間が足りない」といったお悩みがありましたら、弊社が推進チームの一員となってサポートさせていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。